大阪メトロの路線網は将来どう拡張していくのか?過去資料から「市域外延伸」を考える

大阪メトロ

2006年今里筋線の開業以降、新駅整備の動きがなかった大阪市営地下鉄。2018年に大阪メトロへと変わり、20年近い沈黙を破って、2025年に中央線が夢洲まで延伸しました。また現在は中央線支線の整備計画が進んでいます。

大阪メトロは今後、どのように路線網を拡張していくのでしょうか。とある会議で言及された「市域外延伸」をキーワードに、大阪メトロの未来を考えていきます。

副首都推進本部会議で「大阪メトロの市域外延伸」に言及

前提として、大阪メトロは大阪市から民営化した企業で、現在も大阪市が100%株主です。そのため大阪メトロの路線網は主に大阪市内に限られています

しかし、2026年9月17日、大阪府・大阪市が開催した「第26回副首都推進本部(大阪府市)会議」の資料の中で、鉄道好きとして気になる記述がありました。それが大阪メトロの市域外への延伸です。ただし、今回の会議は大阪がめざす副首都像について検討するもので、現時点で「○○線を○○まで延伸する」といった具体的な路線は明言されていません。

では、もし大阪メトロの市域外延伸が具体的に検討されるとすれば、どのように路線網を拡大していくことが考えられるのでしょうか?

実は、過去の公的資料をさかのぼると、現在の大阪メトロ各線を大阪市外へ伸ばす構想はいくつも登場しています。今回は、そうした過去の資料をもとに考えていきます。

「近畿地方交通審議会 答申第8号」の延伸構想

答申で選定された路線

延伸構想を探るうえで、まず見ておきたいのが交通審議会での答申です。ここでは地方自治体や鉄道会社から提案のあった路線について、整備が適当かを検討した結果が示されています。現在の鉄道整備は、この答申に基づいて実施されることが多いです。

メトロポリマン
メトロポリマン

鉄道整備は国や地方自治体の支援が必須ですので、「答申で選定された路線=国がお墨付きを与えた」と捉えて良いと思います。

近畿圏で最新の答申は、2004年10月8日に近畿地方交通審議会が「近畿圏における望ましい交通のあり方」としてまとめた答申第8号です。対象は近畿2府4県で、大阪都心部を中心としたおおむね50km圏。目標年次は2015年とされ、鉄道だけでなくバス・タクシーなども含めた交通政策の方向性が示されています。

その中で、地方自治体や鉄道会社から提案のあった路線のうち、13路線が「京阪神圏において、中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」として選定されています。

京阪神圏において、中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線

No.路線提案区間提案者
1京都市交東西線延伸天神川~梅津~上桂~洛西京都市
2京都市交烏丸線延伸竹田~大手筋~京阪本線交差付近(横大路付近)京都市
3北大阪急行南北線延伸千里中央~箕面船場~新箕面(現 箕面萱野)大阪府・北大阪急行
4大阪国際空港広域レールアクセスJR伊丹~西桑津~大阪国際空港兵庫県
5京阪奈新線延伸登美ヶ丘~高の原京都府
6京阪奈新線延伸登美ヶ丘~学研中央~祝園NT~新祝園奈良県
7大阪モノレール延伸門真市~鴻池新田~荒本~瓜生堂大阪府・大阪高速鉄道
8なにわ筋線新大阪~北梅田(現 大阪駅地下ホーム))~玉江橋(現 中之島)~堀江~JR難波・南海汐見橋大阪府・大阪市
9地下鉄3号線(四つ橋線)延伸西梅田~北梅田~十三大阪市・阪急
10中之島新線(北港テクノポート線)延伸玉江橋(現 中之島)~西九条~千鳥橋~新桜島大阪市・京阪
11地下鉄8号線(今里筋線)延伸今里~杭全~中野~湯里六丁目大阪市
12地下鉄7号線(長堀鶴見緑地線)延伸大正~千島~南恩加島~鶴町大阪市
13堺市東西鉄軌道(LRT)堺第2区~堺~堺東~堺市大阪府

この中には、すでに開業した北大阪急行延伸のほか、現在事業が進んでいるなにわ筋線や大阪モノレール延伸も含まれています。ただ、今回本当に面白いのはここからです。

大阪府が提案していた大阪メトロ延伸案

この答申の作成にあたって、地方自治体や鉄道会社から提案のあった路線を見ると、大阪メトロ(当時は大阪市営地下鉄)各線を大阪市外へ伸ばす提案が7点あります。いずれも大阪府が提案したものです。

近畿地方交通審議会において検討対象となった路線一覧(抜粋)

路線提案区間提案者
地下鉄2号線(谷町線)延伸大日~鳥飼付近~高槻付近大阪府
地下鉄2号線(谷町線)延伸八尾南~藤井寺付近~富田林方面大阪府
地下鉄3号線(四つ橋線)延伸西梅田~大阪国際空港方面大阪府
地下鉄3号線(四つ橋線)延伸住之江公園~三宝~堺大阪府
地下鉄5号線(千日前線)延伸南巽~弥刀方面大阪府・市
地下鉄7号線(長堀鶴見緑地線)延伸門真南~交野方面大阪府
地下鉄8号線(今里筋線)延伸湯里六丁目~美原方面大阪府
地理院地図を加工

谷町線は現在の両端からさらに高槻・富田林方面へ、四つ橋線は十三や大阪空港方面、南へは堺方面。千日前線は南巽から東大阪方面、長堀鶴見緑地線は門真南から交野方面、今里筋線は南へ美原方面まで伸ばす案がありました。

そして次の問題は、それから20年以上経った現在、これらの構想がどうなっているかです。

答申後に動きがあった構想

答申が出たのは2004年。当然ながら、当時検討された路線がそのまま現在まで残っているわけではありません。その後も延伸を求める動きが続いた路線もあれば、事実上検討が終わったもの、逆に答申第8号にはなかった新しい構想もあります。

ここでは答申後に動きのあった3案と、新しい構想1案を紹介します。

「谷町線 高槻方面延伸」は協議会解散後も要望は続く

谷町線の大日駅から鳥飼付近を経て高槻方面へ向かう延伸案については、摂津市・茨木市・高槻市・島本町の3市1町で「地下鉄延伸連絡協議会」を組織し、大阪市や国へ要望活動が行われていました。しかし、答申第8号で延伸路線として選定されず、その後、2009年に協議会は解散しています。

ただ、そこで完全に話が途切れたわけではなく、摂津市はその後も北摂市長会などを通じて延伸の可能性を模索してきた経緯を説明しています。

つまり、「かつて案があった」というだけで現在の有力候補とは言えませんが、地域側で長く要望が続いてきた路線ではあります。

「長堀鶴見緑地線 交野方面延伸」は現在も構想を検討中

長堀鶴見緑地線では、答申策定時に門真南から交野方面へ伸ばす案が大阪府から提案されていましたが、答申第8号では選定されませんでした。

しかし、門真市の「門真市総合交通戦略」では現在も、施策の一つとして「大阪メトロ延伸に向けた機運醸成」が掲げられています。

「今里筋線 湯里六丁目延伸」はBRTで検証中

答申第8号で選定された今里~湯里六丁目については、大阪市が2014年度の検討で、収支採算性、費用対効果の面から、事業化の可能性は「極めて厳しい」としています。

需要喚起・創出や鉄道代替の可能性を検証するため、BRT「いまざとライナー」による社会実験が行われており、当初予定より延長して現在も運営中です。

答申にはなかった「今里筋線 JR岸辺延伸」

一方で、答申第8号のあとに登場した構想もあります。

大阪府の「公共交通戦略」では、今里筋線について、答申第8号に位置付けられた今里~湯里六丁目とは別に、井高野~JR岸辺間が「構想路線」として掲載されています。元となった吹田市の「都市計画マスタープラン」で、岸辺・正雀周辺の拠点性向上や大阪市北東部とのアクセス強化のため、今里筋線延伸の促進が位置付けられていることも紹介されています。

地理院地図を加工

こうして見ると、過去に延伸案があった路線でも、その後の動きはかなりバラバラです。消えた構想もあれば、地域側に残っている構想もあり、答申後に新しく現れた構想もあります。

では、市域外へ大阪メトロのネットワークを広げる方法は、新しい線路を造ることだけなのでしょうか。ここで見ておきたいのが、かつてのOTS線です。

他社線の併合によるネットワーク拡大

後からメトロ化したOTS線

ここまで見てきた市域外延伸は、基本的には「現在の地下鉄をさらに先へ伸ばす」という話でした。ただ、大阪メトロのネットワークを大阪市外へ広げる方法は、必ずしも大阪メトロ自身が新しい線路を建設することだけとは限りません。その参考になりそうなのが、現在の中央線・大阪港~コスモスクエア間、ニュートラム・コスモスクエア〜中ふ頭間です。

この区間は「南港・港区連絡線」として1997年に開業し、大阪市が出資する第三セクターの大阪港トランスポートシステム(OTS)が運営していましたが、乗客数の低迷から運営状況が悪化。そのような経緯から、2005年にOTSから大阪市へ事業譲渡されて市営地下鉄として一元運営されるようになりました。

メトロポリマン
メトロポリマン

230円の運賃が追加で必要なのが、乗客数低迷の大きな原因の1つだと考えています。数十円の連絡割引はありましたが、負担感は大きかったでしょう。

路線名としても、大阪港~コスモスクエア間は中央線の一部、コスモスクエア〜中ふ頭間はニュートラムの一部となっています。(大阪港~トレードセンター前間では、OTSが第一種鉄道事業者から第三種鉄道事業者へ、大阪市が新たに第二種鉄道事業者となりました。トレードセンター前~中ふ頭間は、大阪市へ譲渡。)

OTS自体は大阪市に吸収されたわけではなく、現在も大阪港~トレードセンター前間、コスモスクエア~夢洲間の施設を保有しています。

そして、既存の鉄道を使って大阪メトロのネットワークを広げる、という話になると、どうしても気になる路線があります。

それが、北大阪急行です。

北大阪急行が大阪メトロに併合される可能性は?

大阪メトロ御堂筋線は江坂駅で北大阪急行線と接続し、そのまま箕面萱野駅まで相互直通運転を行っています。この相互直通運転は1970年の江坂延伸時から行われており、2025年には開始55周年を迎えました。利用者から見れば、かなり一体的な路線です。

この北大阪急行は千里ニュータウンや大阪万博(1970年)のアクセス路線の1つとして「御堂筋線の延伸」と計画されたものです。しかし、大阪市を越えて吹田市・豊中市を走ることになるため、大阪市は自市主体での建設・運営に難色を示しており、別会社として発足した経緯があります。

現在、北大阪急行は阪急阪神ホールディングスグループに所属する鉄道会社です。そのため、大阪市の第三セクターであるOTSとは立場がかなり異なるのは、押さえておきたいポイントです。

メトロポリマン
メトロポリマン

北大阪急行は割安運賃でも有名な路線で、OTSで課題となった運賃面で比較しても併合の可能性は低いのではないでしょうか。

市域外延伸の可能性は広い

大阪府の副首都構想を発端に現れた「大阪メトロの市域外延伸」という言葉。

新しく線路を延ばすことなのか。別の事業者が線路を造り、大阪メトロが走ることなのか。それとも、北大阪急行のように別会社のまま、運行やサービスを一体化していくことなのか。今回の資料にある「市域外延伸」という短い言葉だけでは、具体的な形までは分かりません。

ただ、過去の延伸構想やOTS、北大阪急行まで並べてみると、大阪メトロの「市域外への広がり方」にはいくつかの形があることが見えてきます。

今後「市域外延伸」がどのように具体化していくのか、Osaka Metropolisでは引き続き注目していきたいと思います。

引用・参考文献

大阪府「第26回副首都推進本部(大阪府市)会議」,2026年9月17日(2026年9月22日閲覧).

近畿地方交通審議会「近畿圏における望ましい交通のあり方について(答申第8号)」,2004年10月8日(2026年9月22日閲覧).
近畿地方交通審議会「近畿地方交通審議会において検討対象となった路線一覧」,2004年10月8日(2026年9月22日閲覧).
大阪市「第4回大阪市鉄道ネットワーク審議会」,2014年7月2日(2026年9月22日閲覧).
佐藤信之編「京阪神都市鉄道プロジェクト」,鉄道ピクトリアル2015年4月号別冊.

大阪府「公共交通戦略 ~利用しやすい公共交通を目指して~」,2014年1月(2019年11月改訂、2026年9月22日閲覧).
門真市「門真市総合交通戦略」,2022年6月(2026年9月22日閲覧).
摂津市「摂津市議会会議録 平成28年 第3回定例会」,2016年11月(2026年9月22日閲覧).
大阪市「地下鉄今里筋線延伸部におけるいまざとライナー(BRT)の運行による社会実験」,2026年9月1日(2026年9月22日閲覧).
吹田市「吹田市都市計画マスタープラン」,2025年3月(2026年9月22日閲覧).

国土交通省「鉄道事業の許可及び軌道事業の譲渡許可について」,2005年6月7日(2026年9月22日閲覧).

 

 

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