国際化が進む日本。外国人観光客は増加、日本語を主言語として生活していてもあらゆる場面で英語が使われますし、2020年度からは小学校でも英語が必修化されて……と、日本での英語の重要性は増すばかりです。
そしてそんなご時世ですので、鉄道でも当然のように英語が使用されています。
そんな中で今回取り扱うのは「案内表示」。日本なので当然のように日本語案内が主ですが、英語表記も増えていますよね。(さらには中国語や韓国語も増えています。管理人は賛成派。)
今回はYouTubeのコメントで教えて頂いた話を機に意識し始めた、大阪メトロ御堂筋線と相互直通運転を行っている北大阪急行の、駅名の表記揺れを捜索していきます!
緑地公園・桃山台の表記揺れ
「 – 」の有無
そもそも「表記揺れ」とは、「ある単語が2通り以上の書き方をされること」を指します。例えると、引越し、引っ越し、引越、のような感じです。
そして、今回紹介する表記揺れはこちら!
2種類あります。
まず1つは緑地公園の英語表記!「Ryokuchi-Koen」と「Ryokuchikoen」
そしてもう1つは桃山台の英語表記!「Momoyama-dai」と「Momoyamadai」
両方に共通するものは、「– (ハイフン)」の有無です。
実際の事例を見ていきましょう!
どの事業者がどの表記を用いるのか。
緑地公園・桃山台の英語表記が使用されている様々な事例を見て、表記ゆれの起こる理由を考えてみましょう。
車内モニター
まずは北大阪急行所属の車両8000形のモニターから。緑地公園は区切られていますが、桃山台は区切っていません。
大阪メトロ所属30000系の車内モニターでは、緑地公園も桃山台も区切られていません。
こちらも大阪メトロ所属車両、リニューアル工事後の新20系の車内モニターになります。30000系と同様に、緑地公園も桃山台も区切られていません。
大阪メトロ所属車両、リニューアル工事後の新20系に貼り付けられている路線図では、緑地公園は区切られていますが、桃山台は区切っていません。
車両の車内モニターを見てみると、桃山台は統一して区切りなしでしたね。
一方で緑地公園については北急車が区切りあり、大阪メトロ車が区切りなしでした。
緑地公園
駅名標は区切りあり。
桃山台駅(北急)の発車標も、江坂駅(大阪メトロ)の発車標も区切りあり。
大阪メトロは車内案内では区切りなしだったのにどうして…
ホームドアに貼り付けられている路線図も区切りありです。
ついでに桃山台も区切りあり。
ホームドア裏の(車内から覗ける)駅名標?でも区切られています。
緑地公園駅施設内の案内は区切りありで統一されているようです。
今度は外へ。
豊中市が設置していそうなこの地図では区切りなしでした。
交差点名の案内看板は区切られていません。
この看板は道路設置者(国、都道府県、市町村のいずれか)が設置するものですが、これはどこが設置しているのでしょうね…。
桃山台
緑地公園駅の発車標です。桃山台は区切りなし。
駅施設は基本的に区切りあり。
駅施設で例外だったのが、約10年前に新設された北改札口で、改札機横の地図だけは区切りなしでした。
道路案内は安定の区切りなしです。
ということで、車内、緑地公園駅、桃山台駅と見ていきました。
道路案内は区切りなしで統一でした。
ただ、本命の北大阪急行と大阪メトロは表記揺れが発生している状態です。どうしてこうなった…。
緑地-公園、桃山-台なのか?
そもそも「 – 」とは何なのでしょうか。
まずは本来の英語における「 – 」の位置づけを見ていきましょう。
学術的な英語表現を専門に業務を展開するエナゴ学術英語アカデミーによると、主に「 – 」は、①接頭辞との併用、②2語を結ぶ用法、で用いられるそう。他にも5つの用法を紹介していました。
今回の2駅の事例に最も当てはまるとすれば、「②2語を結ぶ用法」に近いかなと思います。
「緑地-公園」、「桃山-台」と2語を結んでいるようには感じます。
緑地公園は用語としてみても、2つの一般名詞を組みあわせたものですよね。
一方桃山台は、桃山と台が複合したように感じますが、個人的には少し疑問があります。というのも元々「桃山」という地名はなく(これによると桃山台の由来ははっきり明文化されていない)、桃-山-台、という3語の複合語のように感じるからです。と言ってもすべてが並列しているわけではなくて、感覚的には「台 with 桃 and 山」って感じ(ただこればっかりは専門家では無いのでかなり私見混じってます)
次に、日本人の作成した英語表記の規則について見ていきます。
最初に紹介した時代背景もあり、観光庁は2014年「観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」を策定しています。公共交通機関はこの対象に含まれているため、従うことが望ましいです。
これによると、「 – 」は、①管理者が外国語表記を規定している場合はそれに従う、②それ以外の場合は日本語の「原語パターン」によって表記方法をきめる、ようです。それぞれ見ていきます。
①管理者が外国語表記を規定している
緑地公園駅の駅名は、駅西に隣接する「服部緑地」に由来しています。公式HPの英語版園内地図には「Hattori Ryokuchi Park」と表記されています。駅名の英語表記とは全然関係ないよ…。
よし、次。
②それ以外の場合は日本語の「原語パターン」によって表記方法をきめる
この規則では、意味のかたまりや発音のしやすさ等の観点から、その間に「 – 」を入れることができるようです。
うーん、これは曖昧な表現。
柔軟に対応できるように抽象的に書かれているのだと思いますが、明確に正解は出せないですね…一応考えてはみましょう。
まず意味のかたまりですが、個人的にこれは英語本来の「 – 」の位置づけの話と同じ見解です。緑地公園は緑地と公園に分けてもいいかな、桃山台は桃、山、台かなって感覚です。
発音のしやすさですが、これは僕が英語の発音に長けていないのでなんとも…。参考がてら車内放送を聞いてみると、緑地公園は「りょくち-こうえん」に、桃山台は「ももやまだい」または「もも-やま-だい」に聞こえました。桃山台は難しいな・・・。
また、あくまでもガイドラインでは『「 – 」を入れることができる』なので入れなくてもいいわけです。「 – 」のない側はこれを主張したら終わり。
「「 – 」はなくてもよいのでつけませんでした。」
例えば、「 – 」まで入れる余裕がありませんでした、とか、その必要性を感じなかった、とか何でもいいわけですね。ややこしいなあ。
結論
今回は英語としての使い方と、日本製の英語表記規則から、「 – 」の必要性を考えていきました。
「 – 」が必要な理由としては、
①2語を結ぶため
②意味のかたまりで区切るため
③発音のしやすさで区切るため
の三種類がありました。
緑地公園駅はいずれの理由も満たしそうなので私は納得できました。(ただし公園公式表記は別に存在するんですけどね)
桃山台駅は正直どれも腑に落ちない感じです。だから北急内でも表記ゆれが起こるのでしょうか。
一方で、「 – 」を必要としない理由は、
①無理につける必要がないため
これにつきます。
これを言えばなんでもありな気がしますが、必要ないと感じたらいいのです。
どうも正解がどの病気なのか微妙で、きちんと統一化されていなさそうな感じがしますが今後の動向は楽しみです。
もう少し考察の余地はあります(他の○○公園、○○台はどうなのかとか)が、今回はとりあえずここまで。この記事が好評でしたら、さらに他の視点から考察していこうと思います。
編集後記
今回は英語表記の特集でした。
本当は駅名の英語表記ってどう決めてんねんとか踏み込みたかったのですが、分からなかったので今回は断念しました。
いつになく真面目に?論理的に?話を進めた感があって、レポートのような雰囲気になったのが大阪メトロポリスとしては珍しかったかと思います。
話は変わりますが、英語を意識せざるを得ない記事でしたが、奇を衒って最低限しか英語を使わないことにしました。読者の皆さんは気づきましたか?笑
最初は、冒頭から「グローバル化が進む…」と英語盛り沢山で書き出していました笑
普段の生活でも英語を併用することが当たり前となっていましたが、大抵は日本語でも存在する表現なのですよね。こういうことを機に日本語を意識してみると、改めて日本語の美しさや魅力に気づけるかもしれないな、と思った管理人メトロポリマンでした。
(そもそも僕の名前が英語だったわ…)
参考文献
エナゴ学術アカデミー「ハイフン」
観光庁「観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」(概要版はこちら)
レファレンス協同データベース「北大阪急行の桃山台駅は、なぜこの名前になったのかわかる本はあるか。昔は桃が生えていたのかどうか調べている。」
SAS「御堂筋線車内放送・駅放送」
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