大阪市には市が主導して建設した施設、いわゆるハコモノがいくつもあります。その中でも巨額の赤字で負の遺産と呼ばれてしまっているものもしばしば。
その中でも、大阪市交通局(現 大阪メトロ・大阪シティバス)に深く関わりのある「オスカードリーム」を見てきました。
オスカードリーム
オスカードリームとは
オスカードリームとは、1995(平成7)年3月に開業した、大阪市営バス(現 大阪シティバス)の住之江車庫用地を有効利用した施設です。
大阪市交通局の長期的に安定した収益の確保、周辺地域の振興と活性化に貢献することを目的として建設されました。
大阪市の所有地をみずほ信託銀行が信託して運用されていた施設で、いわゆる土地信託方式の「ハコモノ」の1つです。
土地信託方式
土地を信託銀行に預けて、信託銀行が活用・管理を行い、収益を配当の形で還元する方式
総事業費は225億円。開業当初から赤字が続き、累積赤字は2004年時点で約52億円。
信託期限30年での予想配当は約261億円でしたが、一度も配当金が支払われることはありませんでした。
みずほ信託銀行は大阪市交通局に対して、借入金約275億円と遅延損害金等の支払いを求めた民事調停を、大阪市交通局はみずほ信託銀行に対して、支払われるはずの配当金約36億円と遅延損害金の支払いを求めた民事調停を、大阪地方裁判所に申し立てました。
最終的には大阪市がみずほ信託銀行に約283億円の和解金を支払うことで決着します。
オスカードリームと似た経緯で建てられた施設がもう1つあります。市電霞町車庫の跡地を利用して建てられた都市型立体遊園地フェスティバルゲートです。
オスカードリームとフェスティバルゲート。2つの大阪市交通局が所轄するハコモノの経営不振が重なり、約10年で約500億円の負担を抱えることになります。
大阪市交通局の民営化が議論に上がった理由は様々ありますが、この2大施設の負債が民営化を促すことになった1つの要因であることは忘れてはいけません。
そんなオスカードリーム。現在はキンキエステートに約13億円で売却され、2015年4月からは同社が保有・管理運営を行っています。
オスカードリームを見てきました
西側から撮影した外観。手前の施設はオスカードリームに併設された大阪シティバス住之江営業所。
屋根の波打つようなデザインが素敵です。
住之江バスターミナルにはバスがびっしり。
試験的に導入される燃料電池バスも見えました。MUFG赤いラッピングが施されているので目立ちますよね。
燃料電池バスは住之江営業所起点の系統で3月25日より運行開始予定です。
住之江バスターミナル(地下鉄住之江公園 停留所)はオスカードリーム1階にあります。営業所に隣接する形です。
バスを待つ乗客が並んでいます。
オスカードリームはニュートラムの住之江公園駅に直結しています。
右の建物はドン・キホーテ住之江公園店です。
1,2階は横向きなのに3階以上は縦向きの謎デザインは置いといて…、フロア構成は下のような感じ。
B1F | 駐車場 |
1~3F | 店舗、多目的ホール |
4F | オフィス |
5F | オフィス、クリニック |
6,7F | スポーツクラブ |
8F | オフィス |
9~19F | ホテル(大阪ジョイテルホテル) |
公式サイトのフロアマップを見ても分かる通り、空室は少なく、想像していた以上に埋まっている印象でした。(2階はワクチン接種会場が入居しているのが大きいのかも)
ニュートラム連絡口はおおきな窓が特徴的。
正面は駅・公園と背の高い建物がなく、遮るものがほとんどありません。
共用スペースの「アトリウム」。5階まで吹き抜けになっており、開放感のある空間です。
全フロア貫通のシースルーエレベーターが3台設置されています。
側面が透けているエスカレーターがあるのは時代を感じましたね。
大阪メトロファンの目線から
大阪メトロファンの管理人メトロポリマンの目線だと、旧ロゴマークが散見されることがワクワクするポイントです。
2階の案内板にはニュートラムのロゴマーク。
1階にはマルコ入り地下鉄マークがあります。
1階の案内では、ニュートラムの文字を含むロゴが入っています。フロアごとに使用されてるロゴが異なるのは何故でしょうか…?
シティバスのロゴはほとんどが汎用的なピクトグラムでしたが、階段にはひっそりと市バス時代のロゴも残っていました。
さらにオスカードリームは、エレベーターを利用する方にとっては、地上とニュートラム駅をつなぐ動線にもなっています。
撮影時、出入口に最も近いエレベーターは故障中でした。
吹き抜けのある広場のエレベーターを使用する必要があるようです。
2021年7月30日からは、オスカードリーム内EVの他にも、住之江公園前交差点の南東にもエレベーターが1台設置され、利用できるようになっています。
地下駅、地上、歩道橋・ニュートラム駅を改札外で結ぶエレベーターです。
編集後記
平日に撮影したのに意外と人多くて(多いとは言ってない)驚きました。
普通にテナントは埋まってますし、回復の兆しは見えているのかな…?
参考文献
大阪メトロ「土地信託事業に係る外部監察チームからの報告書の受領について」,2022.03.15閲覧.
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