【2023/11/03追記】細かな情報更新を行いました。
なにわ筋線とは、大阪駅地下ホーム~JR難波駅・南海新今宮駅の間を結ぶ鉄道路線で、路線名の通りなにわ筋の地下を走ります。JR西と南海が共同運営します。
大阪駅地下ホーム
別称うめきた新駅、北梅田駅など、2023年3月18日開業
現在は特急はるか、くろしお、おおさか東線が使用しています。
30年以上前に計画されつつも一向に計画の進展はないまま時が流れていき、いつしか忘れられつつあったなにわ筋線は、満を持して建設工事が2021年度より開始され、2030年度を開業目標として現在準備が進んでいます。
今回はなにわ筋線についてまとめていきます!
なにわ筋線 整備計画まとめ
事業の概要
工事は2021年度より開始し、2030年度までの約10年間実施される予定です。
(出典 大阪市「大阪都市計画都市高速鉄道なにわ筋線に係る事後調査計画書(その2)」)
区間 | ○大阪駅(地下ホーム)~(仮称)西本町(JR・南海共同営業区間) ○(仮称)西本町~JR難波(JR営業区間) ○(仮称)西本町~新今宮(南海)(南海営業区間) |
建設延長 | 約7.2km(地下6.5km、堀割・盛土0.3km、高架0.4km) |
単線複線 | 複線 |
新規設置駅 | (仮称)中之島駅、(仮称)西本町駅、(仮称)南海新難波駅 |
規格 | ○軌間 1,067mm ○直流 1,500V ○設計最高速度 110km/h |
総事業費 | 約3,300億円、以下内訳です ・出資金660億円(大阪府市330億円、JR南海330億円) ・補助金1620億円(国770億円、大阪府市850億円) ・借入金1020億円(関西高速鉄道が借り入れ、線路使用料収入で償還) |
整備手法 | 償還型上下分離方式 |
整備主体 | 関西高速鉄道株式会社(第三種鉄道事業者) |
運行主体 | 西日本旅客鉄道株式会社、南海電気鉄道株式会社(第二種鉄道事業者) |
輸送需要 | 約24万人/日 |
開業目標 | 2031年春予定 |
整備は上下分離方式で進みます。
第三種鉄道事業者として関西高速鉄道がなにわ筋線の施設を保有し、第二種鉄道事業者のJR西日本と南海電鉄に施設を貸すかたちになります。
列車の運行を担う主体と、鉄道インフラの維持管理を担う主体を別の者とする仕組みのことを「(鉄道の)上下分離」といいます。
鉄道用語辞典(日本民鉄鉄道協会)「上下分離」
ちなみに整備主体の「関西高速鉄道」は、片福連絡線(JR東西線)の建設時に設立された第三セクターです。現在は第三種鉄道事業者としてJR東西線の施設を保有しており、第二種鉄道事業者のJR西日本に施設を貸し、その貸付料(線路使用料)で鉄道建設・運輸施設整備支援機構および金融機関に建設資金を返済する事業を中心としています。
建設ルート
現在建設中の大阪駅地下ホーム(別称うめきた新駅、北梅田駅など、2023年春開業予定)を起点とし、なにわ筋の地下を南下しながら中之島駅、西本町駅を通ります。
西本町駅以南ではなにわ筋から東へ逸れつつJR線方面と南海線方面へ分離します。JR線はJR難波駅へ、南海線は南海新難波駅を通り南海新今宮駅と接続します。
なにわ筋線の走る区間は大阪メトロを中心とした格子状の路線網の中にあり、北からJR大阪環状線、阪神本線、JR東西線、京阪中之島線、大阪メトロ中央線、長堀鶴見緑地線、四つ橋線、千日前線、御堂筋線、阪神なんば線の計10路線と立体交差しますが、乗り換え可能な路線は一部のみです。
10路線と交差するのに対して駅数は4,5駅しかなく、交差部全てに駅を設けるわけではないようです。
具体的には、JR大阪環状線、阪神本線、JR東西線、長堀鶴見緑地線の交差部には駅がありません。建設ルート上の問題や建設費などの問題から見送られたようです。
新大阪駅
なにわ筋線所属の駅とはなりませんが、関空快速、南海特急ラピートは新大阪駅まで乗り入れることになります。
乗り入れ車両の増加による駅利用客増加に対応するため新大阪駅では改良工事を実施することが決定しており、ホーム新設、引上線新設、線形改良などが行われます。
大阪駅 地下ホーム
大阪駅の北側にある梅田貨物駅跡地に新設され、先行して開業している2面4線ホームです。
梅田貨物線の中津~福島駅付近を地下化、大阪駅に停まれない「はるか」「くろしお」の大阪駅乗り入れ、おおさか東線の大阪駅乗り入れの目的で、なにわ筋線とは別で工事が進んでいました。
しかし駅構造はなにわ筋線開業も視野入れて計画されました。
また阪急も大阪駅地下ホーム乗り入れを計画しています。
「なにわ筋連絡線」という名称で、大阪駅地下ホームと十三駅を結びます。さらに十三駅から新大阪への新線も計画しており、近年は両線を1つの路線として建設する方向で計画しているように管理人は感じています。
こちらはまだ決定ではありませんが、採算的にはかなり実現性は高いです。
前提としてこの駅は貨物線と営業路線の供用区間にあるため、この地下駅を貨物列車が通過することになります。貨物線には詳しくないのですが、かなり珍しい光景になるのではないでしょうか。
うめきた新駅前後の急勾配区間を通過する貨物列車は、プッシュプル方式で運行されるそうです。
プッシュプル方式
先頭の機関車に加えて、最後尾に補助機関車を連結する。
この決定に伴って吹田貨物ターミナル駅と安治川口駅では信号を増設。また吹田機関区配属の電気機関車も増備されます。
【更新】(仮称)中之島駅
上下分離式の2面2線ホームとなる予定で、今里筋線関目成育駅と同じ構造です。上下分離式になった理由は不明ですが、40mオーバーの深い駅になったのは駅の南北を川が挟んでいるからです。(北:堂島川、南:土佐堀川)長堀鶴見緑地線大阪ビジネスパーク駅が深い理由と同じですね。
京阪中之島駅と乗換駅になります。そのまま京都方面へ行けるわけですから、なにわ筋線利用客としては便利ですよね。(京都に行くだけならそのままJRで行けばええやんって思いますが、JRと京阪は淀川を挟んでルートが異なるわけですからある程度棲み分けできるのかな…?)
袋小路な路線である京阪中之島線としては、なにわ筋線開業による鉄道ネットワーク形成は非常に待ち遠しいところでしょうね。
【追記】
上り線(大阪・新大阪方面)が地下4階で、下り線(なんば・関西空港方面)が地下5階のようです。
【更新】(仮称)西本町駅
1面2線のホームになる予定です。
なにわ筋線で唯一乗換駅ではない駅になります。大阪メトロ四つ橋線の本町駅まで300mで行けるので駅を出て5分もあれば歩いて行くことは可能です。と言っても、関空から来た荷物の多い観光客としては、地下30mの深さから地上に上がって中央大通を歩きまた地下に降りるというのは、地図上の300mでは測れない大変さがあると思います。
大阪メトロ中央線と立体交差する位置に西本町駅は設置されるわけですが、この場所に中央線の駅はありません。中央線の南側で平行に走る長堀鶴見緑地線はなにわ筋の交差点に西大橋駅があるわけですから、作ることは可能だと思いますけどね。(一方でなにわ筋線には西大橋駅の設置予定はありません。ちなみに西本町駅から西大橋駅まで300mとちょっとです。)
西本町駅より南側はJR専用区間と南海専用区間に分かれます。JR線はJR難波駅へ、南海線は南海新難波駅へと向かいます。
【追記】工事説明会の質疑応答によると現状は大阪メトロ本町駅と接続する計画はないそうです。
JR難波駅
JR線の南端で、2面4線のホームになります。
JR難波駅は1996年の地下化した時点で既になにわ筋線の建設を想定した構造になっています。終端駅のため、地上駅時代には頭端式だったものを地下化の際に通過できる構造に変更、さらに外側線には引き込み線があり、内側線はその引き込み線に合流できるようになっているのも確認できます。
JR難波駅でも改良工事が行われる予定です。既設筐体の中間柱の受替え、引上げ線の駅外移転、渡り線の新設(なにわ筋線内での折り返し用)などが実施される予定です。
(仮称)南海新難波駅
2面2線のホームで、上下線が完全独立した構造であるように見て取れます。御堂筋線梅田駅のようなホーム同士の連絡通路が作ろうとしても、ホームは外側なので不可能です。コンコース階で接続できるようになるのか、御堂筋線あびこ駅のように出入口まで完全分離するのか気になるところです。
まだ仮称ですので確定ではありませんが、JR難波駅のように駅名に「南海」の文字が含まれています。
上の図からも分かりますがこの駅はとても深い駅です。地下40mオーバーの深さに建設されるということで、現在大阪で最深の大阪ビジネスパーク駅(-33.9m)を記録を大幅に更新しますね!
既存の南海なんば駅よりも北側に設置されることから、地下鉄御堂筋線・四つ橋線・千日前線、さらには近鉄難波線(奈良線)と阪神なんば線の各駅への直線距離は短縮されます。乗り換える場合は新駅を利用する方が便利になるかもしれません。(あとは深さがどう出るか)
新今宮駅(南海)
現存する南海の新今宮駅をそのまま使用する予定です。大阪最深となる新難波駅から44‰の超急勾配を一気に駆け上がり現存の高架駅に合流します。
南海本線となにわ筋線が平面交差で合流する計画のようなので、現在の阪急淡路駅のような信号待ちが発生するのでは?と懸念しています。何かいい秘策があるのでしょうか。
また新今宮駅は2020年度より駅リニューアル工事が開始しています。難波エリアのまちづくりが目的ではありますが、なにわ筋線開業に向けての準備工事も同時に進むのではないかと考えられます。
鉄道模型シミュレーターで再現
実際にこの現場を鉄道模型シミュレーターNX(VRM-NX)で再現してみました!なんとなくイメージがつくと思いますので是非見てみてください!
車両
現在のところ判明しているのは、南海が新型特急車両の開発を検討しているということです。1994(平成6)年に登場したラピートこと南海50000系は、なにわ筋線開業時(2031年)には37年目を迎えていることや、地下トンネルを走る車両には設置が義務付けられている車両先頭の貫通扉(避難用の扉)が設置されていないため、南海50000系はなにわ筋線を走ることができません。そのためなにわ筋線に対応した新型特急車両の開発を検討したということです。(あくまでもまだ”検討”です。)
なにわ筋線という新線なわけですが、扱い的には延伸・新ルートの側面が大きいので新型車両の開発はないのかなあと思ったりしています。
整備効果
(整備効果1)新大阪/大阪(梅田)~関西空港のアクセス改善
区間 | 経路 | 現在(最速) | なにわ筋線開業後(現在の想定) |
新大阪~関西空港 | JR | 51分/乗り換え0回 新大阪~大阪環状線経由~天王寺~関西空港(特急はるか利用) | 49分/乗り換え0回 新大阪~なにわ筋線経由~天王寺~関西空港(特急利用?) |
新大阪~関西空港 | 南海 | 60分/乗り換え1回 新大阪~なんば(御堂筋線) 難波~関西空港(南海/特急ラピート利用) | 50分/乗り換え0回 新大阪~なにわ筋線経由~南海新難波~関西空港(南海特急利用?) |
大阪(梅田)~関西空港 | JR | 64分/乗り換え0回 大阪~大阪環状線経由~天王寺~関西空港 | 44分/乗り換え0回 大阪~なにわ筋線経由~天王寺~関西空港(特急利用?) |
大阪(梅田)~関西空港 | 南海 | 54分/乗り換え1回 梅田~なんば(御堂筋線) 難波~関西空港(南海/特急ラピート利用) | 45分/乗り換え0回 大阪~なにわ筋線経由~南海新難波~関西空港(南海特急利用?) |
大阪(梅田)から関西空港のアクセスがかなり改善されます。南海としては悲願の新大阪・梅田進出、JRとしては大阪環状線を利用せず天王寺駅~大阪駅を結べるようになります。今宮駅〜天王寺駅も大阪環状線と並行する大和路線側を走るはずなので、大阪環状線との接点は完全になくなります。
環状線・阪和線の双方にとって、お互いの運行状況に左右されにくくなるというメリットがあります。
なにわ筋線は設計最高速度が時速110キロで設計されているそうです。地下鉄の最高速度でここまで早いのは異例で、例えば大阪メトロではどの路線も時速70キロが最高速度です。
一方でJR西日本はあくまでも規格上の数値です。高速化に対応した架線の開発など技術的な課題も残っているそうで、実際の運転速度は未定だとしています。
(整備効果2)鉄道ネットワークの強化
まずは大阪メトロ御堂筋線の混雑緩和が図れる点が大きいです。朝ラッシュ時などは高密度の運転やバイパス路線である四つ橋線がありながらも混雑度は極めて高いです。また、先日のダイヤ改正で混雑度は高まりを見せています。梅田~難波~天王寺を並行するなにわ筋線の開業は混雑緩和の点で、乗客減に勝る効果が見込めます。
また、大阪環状線を走っていた特急「はるか」「くろしお」や関空快速を環状線から
なにわ筋線の経路へ振り返ることで、将来的な大阪環状線の輸送体系の選択肢が増えます。具体的にはゆめ咲線の夢洲延伸を見越してのことのように感じます。
なにわ筋線、今月(2021年10月)から本格着工!
大阪府の谷口友英都市整備部長は、2021年10月6日の大阪府議会本会議にて今月中に着工すると明らかにしました。またこちらの記事によると、10月26日より準備工事が始まったそうです。
今月から着工するのは、なにわ筋線の建設で新しく設置される3駅のうち、中之島駅(仮称)と西本町駅(仮称)の2駅です。中央分離帯で試掘調査を行って、今後埋設物の移設などの準備工事を行うようです。
最後の1駅は南海新難波駅(仮称)ですが、まだ着工しないようです。こちらも近いうちに始まるのでしょうか。
2021年11月取材
なにわ筋線に関する出来事
- 1989.05.31運輸政策審議会「大阪圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について」(答申第10号)
「大阪駅~湊町駅(現:JR難波駅)・汐見橋駅間」が「目標年次(2005年)までに整備することが適当な路線」として位置づけられる。
- 1999~2000年度国土交通省によるなにわ筋線の整備に関する調査の実施
- 2014.10.08近畿地方交通審議会「近畿圏における望ましい交通のあり方」(答申第8号)
「なにわ筋線 新大阪~北梅田~玉江橋~堀江~JR難波・南海汐見橋」が「京阪神圏において、中長期的に望まれる新たな鉄道ネットワークを構成する路線」として位置づけられる。
- 2009.11~2012.03国土交通省による調査実施
「関西圏における高速交通ネットワークへの鉄道アクセス改善方策に関する検討会」を設置し、なにわ筋線について検討調査を実施。
- 2014.07~2017.05大阪府、大阪市、JR西日本、南海電鉄によるなにわ筋線の事業化に向けた技術検討会の実施
- 2017.05.23大阪府、大阪市、JR西日本、南海電鉄、阪急電鉄が、なにわ筋線計画の概要を公表し、早期事業化をめざすことで一致したと表明
- 2017.09.19大阪府戦略本部会議、大阪市戦略会議にて、なにわ筋線の整備主体を関西高速鉄道とすることなどを意思決定
- 2017.11「なにわ筋線建設事業の推進に関する覚書」締結
なにわ筋線の整備主体を関西高速鉄道とすることを合意
- 2019.01鉄道事業法に基づく鉄道事業許可を国土交通大臣に申請(JR西日本、南海電鉄、関西高速鉄道)
- 2019.03国の平成31年度予算において、なにわ筋線の整備が新規事業化
- 2019.07.10鉄道事業法に基づく鉄道事業許可(JR西日本、南海電鉄、関西高速鉄道)
JR西日本が「大阪~JR難波間(第2種)」、南海が「大阪~新今宮(第2種)」、関西高速鉄道が「大阪~JR難波・新今宮間(第3種)」で許可される。
- 2019.07なにわ筋線の都市計画案ならびに環境影響評価準備書を縦覧
- 2020.02鉄道事業法に基づくなにわ筋線の工事施行認可
- 2020.02なにわ筋線に関する都市計画決定告示(都市高速鉄道:なにわ筋線、道路:敷津東南北線、戎本町南北線)
- 2020.08なにわ筋線の都市計画事業認可告示
- 2021.10.26準備工事開始
中之島駅建設予定地にて、試掘調査と準備工事が始まりました。また西本町駅建設予定地でも同様の工事がはじまるそう。
- 2031年春開業予定
引用・参考文献
大阪市「なにわ筋線について」
大阪市「なにわ筋線事業計画に係る都市計画素案説明会(2019年3月)(配布資料)」
JR西日本「なにわ筋線」
関西高速鉄道(株)「なにわ筋線について」
国土交通省「大阪圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について(抄)(答申第10号)」
近畿運輸局「第8回近畿地方交通審議会」
DIAMOND online「大阪都心と関空を結ぶ「なにわ筋線」構想が実現した理由とは」
コメント
なにわ筋線の中之島駅が上下分離の理由って将来的になにわ筋線と東西線を接続させて関西空港↔神戸・姫路・城崎温泉方面を結ぶ短絡線を建設する為の布石と考えます。
なるほど…。そう聞くとその可能性は感じられますね…実現したら面白いですよね!