大阪メトロに関連するワード、「ペットネーム」をご存じでしょうか?
馴染みのない人の方が多い言葉だと思いますが、かつて大阪メトロでは実際に使われていたワードなんです。
ペットを飼っていたわけではありませんよ…!
地下鉄の「ペットネーム」とは
「ペットネーム」とは
(pet name) 愛称。
出典:精選版 日本国語大辞典
特に、恋人や夫婦、家族内で名前を呼ぶ際に使うような特別な名前のことを指します。海外ではそんな意味合いだそう。
では、大阪メトロのペットネームとは何なのか。
ズバリ、それは
路線愛称
のことです!
大阪メトロの「ペットネーム」が生まれた理由
そもそも、大阪メトロ(当時の大阪市営地下鉄)では、開業当初には路線愛称がありませんでした。
当時、各路線は数字で区別され、1号線、2号線、…と号線呼称で呼ばれていたのです。
しかし、大阪万博(1970年)の開催が決定したことで事態は急変します。
大阪万博の入場者は三千万人とも四千万人とも言われていました。ともなれば万博期間中の地下鉄利用者は大阪市民だけでなく、地方からも大量に押し寄せることが予想されます。
地方の利用客には◯号線と言っても分かりません。
そこで1969年12月、6号線(現 堺筋線)の開業を機に、路線愛称が使用されることになりました。
正式名称 | 愛称(ペットネーム) |
---|---|
1号線 | 御堂筋線 |
2号線 | 谷町線 |
3号線 | 四つ橋線 |
4号線 | 中央線 |
5号線 | 千日前線 |
6号線 | 堺筋線 |
7号線 | 長堀鶴見緑地線 |
8号線 | 今里筋線 |
開業順は 1→3→4→2→5→6→7→8 となっています。(2号線(谷町線)がややこしいんです。)
私たちが目にする場所では路線愛称が使用されていますが、現在でも◯号線表記は正式名称として使用されています。なので路線愛称が決まった後に開業した長堀鶴見緑地線や今里筋線にも数字が割り振られています。
このような経緯から、大阪メトロ職員の間では今でも「◯号線」と言う呼び方が残っているようですよ。
私たちが目にする場所では号線表記は消えたはずなのに…
「ペットネーム」というワードが用いられていた!?
ということで路線名称の話を書いてきましたが、ここからは肝心の「ペットネーム」の話です。
「ペットネーム」というワードは、路線愛称が決まった1969年当時に使用されていたことが確認できます。
まず1つ目は、大阪市交通局が発行していたフリーペーパー「大阪のあし No.47」。1969年12月に発行された分で、まさしく路線愛称が公表された時期になります。
インターネットのない当時に、利用客が最初に路線愛称を知る機会が、おそらくこのフリーペーパーだったのではないかと管理人は推測しています。(普通に広報用ポスターとかありそうな気がしますけど、未確認です。)
ちなみに「ペットネーム」という言葉が出てくるのはNo.47のみです。翌月号以降には「ペットネーム」は出てきません。
また号線呼称と路線愛称がともに掲載されているのもNo.47のみです。(No.46以前は号線呼称のみ、No.48以後は愛称のみ)
もう1つは岩村潔氏の著書「大阪市地下鉄の歩み」です。ペットネームが決まった翌年、1970年に発行された書籍です。
大阪でも号線呼称をやめて、愛称(ペットネーム)にしようと数年前から考えられていたのであるが、なかなかよい案がみつからなかった。
岩村潔「大阪市地下鉄の歩み」,1970,p.732.
堺筋線、中央線の同時開通を機会に従来大阪地下鉄は号線呼称をしていたが愛称(ペットネーム)で呼称することになった。
岩村潔「大阪市地下鉄の歩み」,1970,p.751.
ここにも書かれている通り、実際は万博以前から愛称を付けることは考えられていたようですが、なかなか妙案を思いつかなかったようです。
管理人が現在のところ確認できているのは、この2つのみです。
死語になってしまったのでしょう。
でも個人的にはペットネームって呼ぶの好きですよ。それほどの大阪メトロ愛はあるつもりですからね。
編集後記
死語といえば、ゆめはんn………おっと、誰かが来たようだ。
引用文献
岩村潔「大阪市地下鉄の歩み」,1970,市政新聞社
大阪市交通局「大阪のあし No.47」, 1969.
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