なぜ北大阪急行を設立しなければいけなかったのか

大阪メトロ

北大阪急行は、1970年に開催された日本万国博覧会(大阪万博)の主要輸送機関として設立されました。

北急は大阪市営地下鉄(現 大阪メトロ)御堂筋線から延長する形で建設ました。しかし御堂筋線が延伸したわけではなく、江坂駅より先は別会社の路線として設立されました。

また北急の経営は京阪神急行電鉄(阪急)が主体となって進められました。現在でも阪急電鉄は主要株主で、北急は阪急阪神ホールディングスの連結子会社です。しかし北急とは別に、万博会場の西側には阪急千里線が走っており、万博期間中は臨時駅も設置されていました。

なぜ大阪市・阪急は自身で新路線を建設せず、新会社を設立することになったのか。

今回は北大阪急行の設立までの「紆余曲折」をまとめます。

今回は目次多めです。読みにくかったら申し訳ありません。

北大阪急行の設立経緯

1966(昭和41)年04月 万博輸送のための鉄道建設が提案

1965(昭和40)年、1970(昭和45)年に千里丘陵にて開催することが決定した日本万国博覧会。

翌年の1966(昭和41)年1月、京都大学の調査グループによる基礎調査研究にて、地下鉄1号線の延長または会場乗り入れが望ましいが、閉幕後の活用方法について十分に検討すべきだとまとめられました。

同年4月には、会場原案作成グループによって会場計画の第1次案がまとめられます。その中には会場へのアクセス路線として鉄軌道の建設が提案されました。

阪急千里山線は会場までの分岐線を、地下鉄は1号線の会場までの延伸を、国鉄は茨木駅または岸辺駅からの引き込み線を設置(工事資材運搬の貨物線も兼用)する構想を持っていました。

これに対して大阪市・阪急・国鉄の3者は建設を反対していました。建設費が膨大になる上、万博閉幕後には輸送需要が見込めないと判断していたからです。

1966(昭和41)年05月 大阪市・阪急に万博輸送路線の建設要請

同年5月には会場計画の第2次案がまとめられます。第2次案では乗り入れ路線をいずれかの1路線に絞ることになりました。

第2次案をもとに、日本万国博覧会協会(万博協会)は大阪市には1号線の延伸を、阪急には千里山線(現千里線)の分岐線の設置を要請しました。

しかし今回も大阪市・阪急ともに新線建設には反対の姿勢を示します。

大阪市の見解は「現在の市営地下鉄には輸送力増強が先決で、万博輸送はバスによるべきだ」だとしました。ちなみに大阪市のバス輸送案では江坂に広大なバスターミナルの建造することになっていたそう。

阪急は「千里山線(現 千里線)の新千里山(現 南千里)~北千里間に臨時駅を設置し、千里山線の輸送力増強を進める方が実際的だ」という見解を示しました。

阪急の問題については、会場西口付近に臨時駅「万国博西口駅」を設置することが、このころに決まっています。

1966(昭和41)年08月 大阪市が1号線(御堂筋線)の延伸を辞退

1号線延伸には巨額の投資が必要となることから、大阪府・大阪市の間で意見が対立することもあったようです。

大阪市は、万博関連事業(6路線の路線網完成など)に巨額の負担をすることになっており、1号線の延長に伴う負担は大阪府に求めました。また万博終了後には大阪府が開発主体である千里ニュータウンの輸送路線になることも根拠の1つに挙げていました。

一方で大阪府では、大阪市のために予算を割くことが問題となりました。

このような経緯から、大阪市は正式に1号線の延伸を断ることになりました。1966(昭和41)年8月12日に開催された第六回の鉄軌道問題懇親会でのことでした。

(大阪市側の文献を読む限りでは、<国・府のために><大阪市外に><予定を前倒し>してまで新線を建設するのに<補助金がほとんどない>ことが、最後まで建設を渋る大きな理由だったように感じます。)

1966(昭和41)年11月 万博輸送問題を政府に一任

一向に鉄道事業者は首を縦に振りませんが、同年9月にまとめた第3次案でも万博協会は鉄軌道の乗り入れを前提とした輸送計画を提案します。万博協会はあくまでも鉄道乗り入れは必須であるとの姿勢を示していました。

一方で運輸省は、阪急千里山線の輸送力増強とバス専用路線の建設で十分だとし、その方針で通商産業省にも提示していました。

なかなか鉄道新線の建設が決まらない中、同年11月5日に通商産業省、運輸省、大阪府、大阪市、万博協会で万国博輸送問題委員会を開催。そこで政府が直接介入しない限りこの問題は解決しない、との結論に至ります。万博協会は万国博担当大臣を通して政府に方針を一任することにしました。

1967(昭和42)年06月 阪急主体で会場線建設が決定

政府に一任した万博輸送問題。

通商産業省案として大まかな方向性が打ち出され、関係者の間で具体案が協議されていきました。

その結果、1967(昭和42)年6月20日に開かれた政府の万博関係閣僚協議会にて、万博会場線(江坂〜上新田〜会場)の建設が閣議決定します。

その中では、阪急が経営主体となり大阪府市が協力・指導することも定められました。

同月28日、運輸大臣、通商産業大臣、大阪府知事、大阪市長、阪急社長の五者会談が東京で開かれます。ここで正式に阪急は万博線の建設を要請されました。

阪急は政府・自治体の強力な援助を条件に同意します。国家的行事である万博に、採算は二の次にして協力・参画することにしたのです。

またこの会議では、新路線について主に以下の5点が決まりました。

  1. 万国博急行(江坂~上新田~会場)の建設運営は、阪急主体の新会社が行う。
  2. 大阪府は工事に協力し、出資、無利子資金の貸付を行う。
  3. 大阪市も工事に協力し、相互直通運転を前向きに検討する。
  4. 会場線(上新田~会場)は万博協会が建設費を負担する。
  5. 運輸省は日本開発銀行(現 日本政策投資銀行)の低利融資を斡旋する。

1967(昭和42)年10月 地方鉄道敷設免許を取得

1967(昭和42)年7月28日に地方鉄道敷設免許の申請書を運輸大臣あてに提出し、同年10月13日に免許を取得します。

免許をとった路線は2路線です。

  • 南北線(江坂~上新田(現 千里中央)、6.25キロ)
  • 会場線(上新田~会場前、4.19キロ)

会場線の免許は期限付きという珍しい内容で、免許状には「なお、上新田、会場前間の地方鉄道業の免許は、昭和45年9月15日をもつて失効する。」と付記されていました。

また3日前の7月25日には、新会社の発起人会が開かれ、社名として下の5案が審議されました。

  • 北摂急行電鉄株式会社
  • 北大阪急行電鉄株式会社
  • 万博急行電鉄株式会社
  • 新阪急電鉄株式会社
  • 北摂阪急電鉄株式会社

検討の結果、「北大阪急行電鉄株式会社」に決定したようです。

1967(昭和42)年12月 新会社設立

1967(昭和42)1211日、北大阪急行電鉄の創立総会が新阪急ホテルで開かれ、新会社が設立されました。

資本金は15億円。出資比率は阪急50%、大阪府25%、関西電力5%、大阪瓦斯・三和銀行・住友銀行・大和銀行がそれぞれ4%です。公共の大阪府が出資しているため第三セクターとなります。一方で大阪市や、沿線の吹田市・豊中市は一切出資していません。

1968(昭和43)年7月9日には工事施工の認可も受け、同月16日には工事に着手することになったのでした。

なぜ北大阪急行を設立しなければいけなかったのか

ここからは素人の解釈です。

第1次案が出た時点で市、阪急、国鉄がいずれも万博輸送新線の建設を拒否した所からも見て取れますが、会場線建設は貧乏くじだったのかもしれません。

当時はどのような政治的手法で建設費の負担割合を決めていたのか管理人には分かりませんが、それにしても会場線の建設費をどこも出し渋っていたことにも驚きでした。それは「誰の目にも成功は見えていなかったのでは?」とも思ってしまいます。

会場線を建設しても成功はしませんが、建設しなければさらに酷い大失敗になる、だからどこかが人柱にならければいけなかった…

その人柱となる貧乏くじを新会社が引かせることで、リスクを少しでも減らそうとしたのかな…と感じた管理人でした。

編集後記

赤字路線になるからと誰も手を付けたがらなかった万博輸送新線。

「万博輸送だけで建設費を返済できた」…なんて分かっていれば、大阪市も阪急も国鉄も間違いなく手を伸ばしていたことでしょう。

そんなパラレルワールドに行けたなら、吹田周辺の全く異なる路線図を見ることができるかもしれませんね。

参考文献

佐野尚「北大阪急行電鉄(万博急行)建設計画について」,鉄道ピクトリアル,1967,第17巻第12号(通算204号),pp.62-63.
小森光昭「北大阪急行電鉄の誕生」,鉄道ピクトリアル,1970,第20巻第1号(通算233号),pp.28-31.
藤井信夫「大阪市営高速鉄道(後)」,鉄道ピクトリアル,1978,第28巻第10号(通算356号),pp.62-72.

佐藤信之編「京阪神都市鉄道プロジェクト」,鉄道ピクトリアル2015年4月号別冊.

大阪市交通局「大阪市交通局七十五年史」,1980.

北大阪急行電鉄「北大阪急行25年史」,1994.

石本隆一「大阪の地下鉄」,1999,産調出版.

日本万国博覧会協会「日本万国博覧会公式記録 第2巻」,1972.
日本万国博覧会協会「日本万国博覧会公式記録 第3巻」,1972.

京都大学万国博調査グループ「日本万国博覧会会場計画に関する基礎調査研究」,1966,日本万国博覧会協会.

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