【この記事は2020年7月19日に公開した記事を大幅に加筆したものです。】
2025年1月19日(日)、大阪メトロ中央線はコスモスクエア駅のその先、夢洲駅まで延伸開業しました。
この記事では、この夢洲延伸事業について、事業概要や開業の経緯、配線、運行計画など事業全般をまとめています。
大阪メトロ中央線 夢洲延伸
事業の概要
今回の夢洲延伸は、大阪港トランスポートシステム(以下、OTS)の北港テクノポート線の建設計画の一部です。路線名は異なりますが中央線と直通しており、案内上は中央線を延伸とされています。
この北港テクノポート線は、「南ルート」と「北ルート」の2つに事業が切り分けられています。
北港テクノポート線の2ルート
南ルート:コスモスクエア駅~夢洲駅
北ルート:夢洲駅~舞洲駅(仮称)~新桜島駅(仮称)(夢洲車庫含む)
北港テクノポート線は一度事業化され、鉄道道路共用トンネルである夢咲トンネル(コスモスクエア駅 – 夢洲駅間)の鉄道部分の準備工事だけは既に始まっていましたが、一旦全ての事業が休止している経緯があります。
しかし2018年に、2025年大阪・関西万博の夢洲開催決定を受け、南ルートのみの事業再開が決まりました。
この事業は、2020年7月7日に着工、万博の開幕直前の2025年1月19日(日)に開業しました。
当初この延伸区間の事業許可を取得したのは「OTS」でしたが、南ルート事業再開に伴い事業計画を変更し、施設管理(第一種鉄道事業者)はOTS、運行(第二種鉄道事業者)は大阪メトロとなりました。
事業者 | 大阪メトロ(第二種鉄道事業者) OTS(第一種鉄道事業者) |
路線名 | 北港テクノポート線 (案内上は中央線として扱う) |
事業区間 | コスモスクエア駅~夢洲駅 |
事業延長 | 約 3.2km |
設置予定駅 | 夢洲駅:大阪市此花区夢洲 |
建設費 | |
開業時期 | 2025(R7)年1月19日(日) |
夢洲駅(動画)
1面2線島式ホーム。全長は約150m、幅員は10m。大阪・関西万博のメインアクセス駅として他駅と比較すると、ホームやコンコース、出入口も大規模になっています。
コスモスクエア駅側には両渡り線や保線用側線が設置されています。
夢洲駅についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
開業初日の夢洲駅のシャッターが開く瞬間から、出発式や一番列車、駅内部などを撮影した動画はこちら。
万博開催・IR建設に伴う夢洲駅延伸計画が公表された際には、駅上にタワービルの建設も公表されていましたが、建設計画は中止されています。
夢洲駅上に地下1階、地上55階、高さ約275mの巨大タワービルの建設を構想していました。万博と統合型リゾート(IR)の開業との相乗効果を期待しての計画でした。
総工費は約1000億円。ホテル・オフィス・商業施設の複合施設で、最上階には展望台も設置予定でした。
新型コロナウイルスの影響でIRの開業が27~28年度まで遅れる見通しとなり、タワービル建設計画は中止となりました。
また、建設ルートは当初計画から少し変更されています。
ホームや分岐器の位置移動や、ホーム幅の2m拡幅など、輸送計画や万博会場敷地との調整かと思われます。
詳しくはこちら
車両は新型に総入れ替え
夢洲延伸に合わせて新型車両400系が23編成導入されます。
これまで中央線では20編成の車両(20系×15編成、24系×5編成)が所属していましたが、すべての車両を400系と置き換え、さらに延伸に伴う増備用で3編成を追加して、合計で23編成です。
さらに、「大阪万博の開催期間中」は、増発用に30000A系を10編成導入されます。
既に御堂筋線・谷町線で使用されている30000系のモデルチェンジ型です。
30000A系は万博終了後に全編成が谷町線に転属し、中間更新工事を受けていない22系と置き換えられます。
400系
30000A系
詳しくはこちらの記事に。
万博のため、ということで車両を総入れ替えするとはさすがに驚きました。
さらに、増備用の30000系も驚きですよね。なんといっても、緑帯の30000系は期間限定ですので、要チェックです。
また中央線と相互直通運転を行う近鉄けいはんな線の車両は、継続して7000系・7020系が使用されます。増備・更新等の計画は公表されていません。
近鉄は第三軌条方式・架線集電方式の両方に対応した新型車両を開発し、近鉄奈良線とけいはんな線で直通運転を行う計画もありましたが、見送られています。
詳しくはこちらの記事に。
夢洲延伸に伴う2度のダイヤ改正(動画)
夢洲延伸に伴って、2025年1月11日(土)と1月19日(日)の2度にわたり中央線のダイヤ改正が行われました。2度に分けられていますが、実質的には一体で行われたものです。
1度目(2025年1月11日(土))のダイヤ改正の内容は以下の通りです。
- 大阪港~コスモスクエア間の最高速度を時速70kmから時速95kmに引き上げ。
(大阪港駅~コスモスクエア駅(~夢洲駅)間で車内信号システムを導入) - 各駅の停車時間が5秒から10秒延長。(ホームドア使用のため)
- 大阪港駅での停車時間を20秒延長。(信号システム切り替えのため)
- コスモスクエア行きの列車を全て夢洲駅まで運行。ただしコスモスクエア駅~夢洲駅間は営業運転を行わず、回送扱いで運行。
2度目(2025年1月19日(日))のダイヤ改正の内容は以下の通りです。
- コスモスクエア駅~夢洲駅間で営業運転を開始。
1度目と2度目のダイヤ改正間の1週間限定で運行された、貴重な回送列車の動画はこちら。
夢洲車庫の整備は見送りに
北港テクノポート線計画では、夢洲駅付近に夢洲車庫の整備予定です。
しかし今回の南ルート建設事業では、車庫整備は含まれていないようです。
位置的にはセブンイレブン大阪夢洲店の西側のようで、夢洲駅の北西(舞洲)側から出入庫線がUターンするように伸びています。
万博開催前にOsaka-Subway.comさんが大阪市港湾局の広報担当の方に確認した際には、10編成分の留置線と洗浄線や検査線も兼ね備えた車庫になる計画があるようでした。万博決定後に計画が変わっていることはあると思いますが、このくらいの規模なのだろうという目安にはなると思います。
こちらの記事でも解説しています。
ダイヤは5割増、万博開催中の特別措置
※あくまでも「大阪万博の開催期間中」の話で、詳細は発表されていません。
中央線の運行本数を現在の1時間あたり最大16本から、1時間あたり最大24本に増やす方針です。
大阪万博の1日あたりの来場者は最大28.5万人を見込んでおり、その4割にあたる11.8万人の輸送を、中央線が担うことを想定しての決断です。(残り2割がシャトルバス、4割はその他自動車)
さらにこの期間中は、夢洲駅に臨時改札を、森之宮検車場には臨時車両置き場を整備し、大阪府市が整備費用を負担します。
森ノ宮検車場の臨時車両置き場は、森之宮新駅が建設予定です。万博終了後に増発用30000A系が谷町線へ転属したのち、臨時車両置き場を撤去して新駅が建設される予定です。
森之宮検車場の臨時車両置き場・森之宮新駅の配線図についてはこちらの記事から
整備費40億円の追加
工事方法の変更などのために約40億円の追加費用が発生したそう。
というのも、想定以上に地盤が弱かったことがわかっため、工事方法を一部変更したことが要因です。今後は工事費を圧縮できる部分を検討していくそうです。
これは毎日新聞の取材にて分かった内容です。さらに「整備費用が250億円だ」と報じられたのはおそらく初めてなのではないでしょうか。
540億円だという記事も以前に見たことありますが…。
鉄道模型シミュレーターで再現!(動画)
鉄道模型シミュレーターNXで延伸区間を再現しています!
工事の経過記録(動画)
当サイトでは、夢洲延伸工事の記録を定期的に行っていました。実際の現場もぜひご覧ください!
2019年5月取材
2020年8月取材
事業の歴史
- 2000.10.11OTSが北港テクノポート線の第一種鉄道事業許可を取得。
コスモスクエア~新桜島間。
新駅は夢洲(仮称)、舞洲(仮称)、新桜島(仮称)の3駅。 - 2000.12.01OTSが北港テクノポート線の土木関係の工事施工認可を取得。
- 2001.07.27OTSが北港テクノポート線の電気関係の工事施工認可を取得。
- 2009.08.01「コスモスクエア~夢洲」間の夢咲トンネルの道路部分が開通。鉄道部分は準備工事のみ実施。
- 2009.12大阪市行政評価委員会の答申により、北港テクノポート線の事業休止が決定。
- 2018.11.242025年国際博覧会の開催地が大阪夢洲に決定。
大阪・関西万博の名称で2025年4月13日から10月13日まで開催。
- 2018.12.20大阪市高速電気軌道 (Osaka Metro) が夢洲駅周辺の開発の参画構想を発表。
この当時は、夢洲駅上に地下1階、地上55階、高さ約275mの巨大タワービルの建設を構想していました。万博と統合型リゾート(IR)の開業との相乗効果を期待しての計画でした。新型コロナウイルスの影響でIRの開業が27~28年度まで遅れる見通しとなり、タワービル建設計画は中止となりました。
総工費は約1000億円。ホテル・オフィス・商業施設の複合施設で、最上階には展望台も設置予定でした。
- 2019.02事業休止となっていた北港テクノポート線のうち、南ルート(コスモスクエア~夢洲)の事業再開が決定。
夢洲で開催する2025大阪万博とIR構想を見据え、コスモスクエア駅~夢洲駅間のみの事業再開を公表。夢洲車庫や夢洲駅~新桜島駅間は含まれません。
- 2020.07.07夢洲駅等の建設工事が着工。
夢洲駅は開削工法、夢咲トンネル(既設)~夢洲駅間はシールド工法で建設。
- 2021.05.15整備費が約40億円追加に。
- 2022.04.27OTSが夢洲駅基本デザインを公開。
基本コンセプトは「移世界劇場 動く(いきる)=移動の魅力を発信する駅」。ホーム階、コンコース階のデザインを公開した。
- 2023.05.24シールドマシンが到達。
夢洲駅から発進したシールドマシンが夢咲トンネル部に到達。
2023年6月21日にはシールド到達式も挙行されました。 - 2023.08.25駅名が「夢洲」に正式決定。
OTSが事業基本計画等の変更を申請。
大阪メトロが第二種鉄道事業許可を申請。
大阪市が南東出入口の建築デザインを公開。OTS大阪メトロは国土交通大臣に「北港テクノポート線(コスモスクエア駅から夢洲駅間)にOsaka Metro 中央線が乗り入れる第二種鉄道事業許可」を申請。
計画当初はOTSが施設管理・運行を一体で行う計画だったが、OTSが施設管理(第一種鉄道事業者)、大阪メトロが運行(第二種鉄道事業者)を担うこととなる。
- 2023.12.22OTSの事業基本計画等の変更が認可。
大阪メトロが第二種鉄道事業許可を取得。 - 2024.05.17延伸区間の加算運賃が認可。
コスモスクエア駅~夢洲駅間の運賃は、通常の運賃に加えて加算運賃を適用することが公表。
金額は、普通運賃+90円、通勤定期+3,370円、通学定期+1,520円。 - 2024.09.05延伸区間の開業日を2025年1月19日と公表。
- 2025.01.11大阪メトロ中央線でダイヤ改正を実施。
大阪港駅~コスモスクエア駅間で車内信号システムを導入し、最高速度を時速70kmから時速95kmに引き上げ。
各駅の停車時間が5秒から10秒延長、大阪港駅では20秒延長。
コスモスクエア行きの列車は全て夢洲まで運行するが、コスモスクエア駅~夢洲駅間は営業運転は行わない(回送扱い)。 - 2025.01.18夢洲駅開業セレモニーを挙行。
駅コンコース階にて挙行。
- 2025.01.19コスモスクエア駅~夢洲駅間が開業。
大阪メトロ中央線でダイヤ改正を実施。
夢洲駅にて開業出発式を挙行。回送扱いで運行していたコスモスクエア駅~夢洲駅間で営業運転を開始。
開業出発式はホーム階1号車側にて挙行。阿波座管区駅長の出発進行の合図により、5時2分発の初発列車が夢洲駅を出発。
引用・参考文献
大阪メトロ「地下空間の大規模改革及び 夢洲開発への参画について」
大阪メトロ「Osaka Metro 中央線延伸部工事(北港テクノポート線)のシールド到達式を挙行しました」,2025.02.01閲覧.
大阪メトロ「北港テクノポート線(コスモスクエア駅から夢洲駅間)の第二種鉄道事業許可を申請しました」,2025.02.01閲覧.
大阪メトロ「北港テクノポート線(コスモスクエア駅から夢洲駅間)の第二種鉄道事業許可を取得しました」,2025.02.01閲覧.
大阪メトロ「Osaka Metro 中央線延伸部(コスモスクエア駅から夢洲駅間)の加算運賃の上限設定について認可されました」,2025.02.01閲覧.
大阪メトロ「Osaka Metro 中央線延伸部(コスモスクエア駅から夢洲駅間)が2025年1月19日(日曜日)に開業します」,2025.02.01閲覧.
大阪メトロ「2025年1月にOsaka Metro 中央線のダイヤ改正を行います」,2025.02.01閲覧.
大阪メトロ「」,2025.02.01閲覧.
大阪港トランスポートシステム「北港テクノポート線(仮称)夢洲駅基本デザイン(本編)」,2025.02.01閲覧.
大阪港トランスポートシステム「北港テクノポート線新駅の駅名を「夢洲」駅に決定し、近畿運輸局に届出をしました。」,2025.02.01閲覧.
大阪港トランスポートシステム「事業基本計画等の変更(線路を使用させる)認可申請を行いました。」,2025.02.01閲覧.
大阪港トランスポートシステム「事業基本計画変更(線路を使用させる)が認可されました。」,2025.02.01閲覧.
大阪市「「夢洲駅の南東出入口」(大阪・関西万博東エントランスへの出入口)の建築デザイン等について」,2023.08.27閲覧.
大阪市「Osaka Metroの第2種鉄道事業許可申請及び夢洲新駅の駅名決定について」,2023.08.27閲覧.
大阪港湾局「【事業名】 臨港鉄道整備事業 (北港テクノポート線)」2023.08.27閲覧.
朝日新聞「大阪メトロ中央線、運行本数5割増で調整 万博の期間中」
産経新聞「夢洲の超高層ビル開発「段階的に行う」大阪メトロ社長 IRの動向がカギ」
MBS「大阪メトロ延伸整備費は約40億円追加か 工事方法一部変更などが要因 大阪市が試算」
Osaka-Subway.com「【中央線】大阪オリンピックの置き土産…夢洲車庫の実現なるか」
伊原薫「そうだったのか! Osaka Metro 民営化で変わったもの、変わらなかったこと」(交通新聞社)
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