現在夢洲(ゆめしま)では、2025年開催予定の大阪・関西万博、そして統合型リゾート(IR)の建設に先駆けて、メインアクセス路線となる大阪メトロ中央線の夢洲延伸工事が進んでいます。
中央線と相互直通運転を行っている近鉄は、奈良と夢洲を結ぶ直通列車の開発・運行を計画しています。
今回の記事では、この直通列車についてまとめていきます。
近鉄奈良線と夢洲の直通列車
課題が沢山
そもそも線路が繋がっているけれど…
中央線自体が近鉄奈良線が繋がっているわけではありませんが、中央線と相互直通運転している近鉄けいはんな線が奈良線とつながっています。
ただし繋がっていると言っても、現在の経路では、
生駒駅(けいはんな線) ⇔ 東生駒車庫 ←(スイッチバック)→ 東生駒駅(奈良線)
という営業列車にするにはあまりにも不便な経路しかありません。
そのため近鉄は生駒駅付近に渡り線を設置する計画を発表しています。
第三軌条と架空電車線
中央線/けいはんな線と、奈良線はいずれも電気で動く電車ではありますが、集電方法が違います。
中央線/けいはんな線は「第三軌条方式」といって、車両の上に張っている架線に電気を流し、パンタグラフを使って集電します。
一方で近鉄奈良線は「架線集電方式」といって、走行用のレール以外にある第三のレール(第三軌条)に電気を流し、集電靴(コレクターシュー)を使って集電します。
この違いがネックで、この両方に対応した車両は大阪メトロにも近鉄にもありません。さらに言うとそもそも世界的にもこの例が少ないのです。
両方の集電方式に対応した電車例
・ユーロスター(イギリス・フランス・ベルギーなど)
・メトロノース鉄道(アメリカ(ニューヨーク))
など。
そのため近鉄は長い時間をかけて両方の集電方式に対応した新型車両の開発を進めています。ドイツ企業に開発を依頼しているそうです。
一方で、どちらの集電方式にも関与しない「蓄電池方式」の検討もされているようです。蓄電池方式なら走行中に外部から電気を取る必要がありません。
事業の歴史
- 2019.01.19近鉄が「奈良-夢洲」直通特急の検討開始と報道
グループの近畿車輌などと両線の集電方式に対応した新型車両の開発検討を開始した。
生駒駅の渡り線新設も検討。 - 2019.05.14近鉄グループ中期経営計画を公表
公式に計画を発表。
また同日、社長の記者会見にて海外メーカーに車両開発の依頼を公表。
- 2019.06.13蓄電池車両導入を検討していると報道
- 2019.11.14直通特急が伊勢志摩まで運行と報道
訪日客の獲得のため。
- 2020.11.12新型車両の開発・運行を遅らせる可能性を示唆
令和2年9月中間連結決算の記者会見にて近鉄幹部が公表。
実施時期は経済環境や、需要の回復状況を勘案する。 - 2021.03.22大阪万博前の開業見送り検討
IR開業先送りを受けて、万博閉幕からIR開業までの空白期間に夢洲への旅客需要が見通せなくなったため。IR開業に合わせて検討する。
海外メーカーがドイツ企業であることも初報道?
参考文献
THE SANKEI NEWS「近鉄が「奈良-夢洲」 直通特急で 万博・IR見据え」(最終閲覧日2020/03/22)
THE SANKEI NEWS「大阪・関西万博 会場・夢洲へのアクセスに不備 「コロナ」「IR遅れ」で鉄道の延伸進まず 12月1日に承認見通しだが…」(最終閲覧日2020/03/22)
THE SANKEI NEWS「近鉄 夢洲への直通列車 大阪万博前の開業見送り検討」(最終閲覧日2020/03/22)
朝日新聞デジタル「近鉄、蓄電池車両の導入も検討 万博会場行き直通列車で」(最終閲覧日2020/03/22)
日本経済新聞「近鉄、万博会場―伊勢志摩に直通特急 国際リゾートに」
近鉄グループホールディングス「新「近鉄グループ経営計画」~長期目標(2033年度)および中期計画(2019-2023年度)~ 資料編」(最終閲覧日2020/03/22)
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